源助ダイコンは石川県で秋ダイコンとして栽培されてきたが、これを盛夏に播種すると根部の中心部が空洞になる空洞症が多発する。本研究は、この空洞症の発生機構を解明し、実際栽培上の発生防止対策を確立することを目的としている。源助ダイコンを生育初期から中期までを不適環境下、例えば高温あるいは高濃度のオ-キシン処理、で栽培すると、その時期の根部肥大が極端に抑制され空洞が多発するが、逆にこの時期だけを適温にすれば他の時期が不適環境下であっても空洞は発生しない。根部肥大と空洞発生との関係をみると、生育後期までの根部生育量に対する生育初期から中期までの生育量の比が大きい場合には空洞が多発し、その比が小さい場合には発生しない。この場合の道管の配列をみると、前者の場合には急激に道管が離反するのに対し、後者では道管相互の離反が小さい。このことは、前者では木部柔細胞が盛んに増殖して根部の肥大をうながしているのに対し、後者では柔細胞の分裂活性が低いことを示している。一方、空洞は生育のごく初期に根部の中央部に発生した破生間隙が充填されていくため空洞にはならないが、不適環境下では柔細胞の増殖が抑制されるため間隙は充填されず空洞へと発達する。なお、源助ダイコンと空洞が発生しにくい品種を比較してみると、発生しにくい品種では高温下でも柔細胞の分裂が活溌であるため、破生間隙は充填され空洞に発達しない。 以上をまとめると、空洞の発生は破生間隙が柔細胞で充填されていく度合と、破生間隙が根部肥大にともない発生する度合とのバランスにより決定されるものと考えられる。したがって、実際栽培上空洞発生を防止するには、生育後期の根部肥大を抑制する、あるいは生育初期から後期までの生育を促進する栽培管理が必要である。
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