キュウリモザイクウイルス(CMV)の系統間における核酸ゲノムの比較と組換えを目的として研究を行い、以下の知見を得た。また、CMVと同じウイルスグループに属するキク微斑ウイルス(CMMV)をペチュニアから分離し、新病害として記載した。1.CMV感染葉から複製型二本鎖RNAを抽出し、電気泳動と銀染色により分離株間のゲノムを比較した。その結果、RNA1〜3の泳動度の差によってCMVの系統を迅速、簡便に判別でき、また、RNA3の差が血清型の差に一致することを示した。 2.CMVからは、病原性に影響を及ぼすとされているサテライトRNA5(CARNA5)がしばしば検出される。本研究では、CARNA5の複製型二本鎖RNAを非放射性のフォトビオチンでラベルし、プローブとして用いるハイブリダイゼーション法を開発し、CARNA5を安全で迅速に検出できることを示した。さらに、電気泳動度の異なる3種のCARNA5の間では、塩基配列に差異のあることを示した。 3.えそモザイク症状を示すピーマンとモザイク症状を示すペチュニアからCMMV-KとCMMV-Uをそれぞれ分離した。両分離株の粒子形状、宿主範囲、アブラムシ伝搬性を調べ、純化試料を用いて抗血清を作製し、外被タンパク質や核酸の性状を明らかにした。このCMMVを植物で継代すると病徴の軽減化がみられた。この現象には、CARNA5と塩基配列に相同性のあるサテライト様RNA-5が関与していると考えられた。 4.CMVの複製型二本鎖RNAをタバコプロトプラストにエレクトロポレーションしたが、全く感染が成立しなかった。このことから、複製型二本鎖RNAはCMVのゲノム組換え実験に適さないと考えられた。
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