研究概要 |
1.室内飛翔実験, セジロウンカ雌を虫ピンに付着し風洞内で0〜7時間飛翔させた所, 生乾体重, トリグリセリド(TG)含量, Ca, Mg含量は飛翔によって著しく減少した. 但し同程度の生体重減少は非飛翔絶食個体にも見られた. 2.東支那海採集の個体群. 気象観測定点(31°N, 126°E)で1984-6-29, 1985-7-19, 1986-6-29, 1987-7-7, -10, -11に採集したセジロウンカ雌115匹の乾体重を計った所, 1987年の個体は前3年の個体より著しく大きかった. 前3年には採集時, 不連続線が華中(上海附近)から九州にのび, 風向から飛来源は遠く中国中南部附近と推定した. 一方1987年の採集日には沖縄南方に台風が近づき, ウンカは近くの沖縄附近から飛来した可能性がある. 全個体について, 体密度, TG脂肪酸含量, 又は体密度, Ca, Mg含量についてクラスター分析を行った結果, 前3年と1987-7-7の個体群は同一クラスターに, 1987-7-10, 11日の個体群は3つのクラスターにわかれた. 3.長崎農試での採集個体群. 1986-6-17から19までの17日間と1987-6-2から7-20までの12日間に予察灯で採集した個体の体密度, 両脂質含量, 又は体密度, Ca, Mg含量をパラメータとし, 東支那海採集個体(飛来個体)のそれらについて判別関数を計算比較し, 飛来個体の有無を調べた. その結果, 脂質分析による新規飛来数(飛来後1日以内の個体)は, 各12匹の中1日平均4匹(0〜9匹)であり, 一方Ca, Mg含量による飛来直後個体数は1日平均3匹(0〜8匹)であった. 飛来率は不連続線の停滞と時間的によく一致した. 4.25都道府県における飛来数. 1986, 1987年採集個体について3)と同様な分析の結果, 各12匹分析中平均2〜4匹の新規飛来が全国的に存在した. 5.以上の結果から飛来時期, 規模(率)について解明できた. 今後, 中国, 東南アジア, 日本各地から採集のウンカの各種酵素アイソザイムの分析比較により, 飛来源が解明出来ると思われる.
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