研究概要 |
海外から毎年6・7月、日本へ飛来すると考えられているウンカの数、飛来源を確定するため、次の3研究を行った。(1)脂質分析による飛来セジロウンカの判別。東シナ海上(31°N、126°E)と日本各県農試で、1986、1987年6〜7月に採集したウンカの乾体重、脂肪、脂肪酸を計測し、3要因について判別関数を計算比較した。その結果、長崎農試、各県農試で採集された各標本12匹当たり平均4.2〜4.5匹が新規飛来虫(飛来後3日以内)と判別された。新規飛来虫は時間的、地域的に列島上空に不連結線が停滞した時に集中した。また東シナ海個体群の脂肪含量は採集時期により変動幅があり、飛来源の多様性を示唆した。(2)Ca,Mg含量測定による飛来セジロウンカの判別。ウンカは飛翔中、絶食によりCa、Mg含量を減少する。この知見に基づいて1986年6月、1987年6、7月東シナ海上の気象観測船(31°N、126°E)、日本各地で採集したウンカの乾体重と、Ca、Mg含量を原子吸光法で測定し、判別関数を求めて2両者を比較した結果、各地の採集標本のなかに東シナ海群に属する個体、即ち新規飛来個体(飛来後24時間以内)が存在し、天気図上の不連続線付近に集中した。また東シナ海個体群をクラスター分析した結果、各軽量値が小さい1986年採集のAグループと大きい1987年採集のBグループとに分けられ飛来源の遠近を示唆した。(3)東南アジア諸国におけるドビイロウンカの各種酵素アイソザイムの解析(予備研究)。ウイカの生化学的な地域差を調査し、飛来ウンカのそれと対比して飛来源を確定する事を目的とした。東南アジアが採集した6系統について、全タンパク、9種酵素を平板ポリアクリルアミド等電点電気泳動法で分離比較した結果、malic enzymeとesterasesで、遠方のインドネシア、マレーシア個体群と、飛来源と見なされているフィリピン、台湾個体群で明らかなバンドの有無に違いが見られた。
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