研究概要 |
植物病原細菌と宿主植物との間の特異性の認識機構の一端を解明する目的で、Xanthomonas campertris種に属する5pathovars、6菌株と、キャベツなど6種類の植物とを組合せて、葉面に対する細菌の付着の差異を生菌数の希釈平板法(生菌法)と、4^C4-グルコ-ス標識細菌の放射能活性測定法(RI法)で検討した。1.まず、付着率の検定条件を検討し、生菌法では細菌浮遊液に1葉ごと浸漬接種したのち、葉円板を打抜き、蒸留水中で振とう洗浄する方法、RI法ではRI標識細菌浮遊液20μlを葉円板上に滴下接種したのち、蒸留水中で振とう洗浄する方法を採用した⊇ 2.供試5pathovarsのキャベツ葉に対する付着の差異を検討した結果, 生菌法・RI法のいずれでも, キャベツを宿主とするpv.campestris(黒腐れ病菌)が他の非親和性4pathovarsより有意に高い付着率を示した. 又, pv.campestrisは宿主のキャベツに対し, 他の非宿主4植物より有意に高い付着率を示した(RI法). このように宿主-病原細菌間に付着特異性の存在が確認された. 3.pv.campestrisのニトロソグアニジン処理による病原性喪失変異株は, 病原性株に比し付着率が有意に低かった(生菌法). 紫外線照射による死菌は生菌と同等の良好な付着を示したが, 100°C, 10分間の加熱による死菌はほとんど付着しなくなった(RI法). 細菌浮遊液の遠心菌体洗浄処理は付着に影響しなかったが(生菌法), 同細菌から分離・部分純化した菌体外多糖類(EPS)を濃厚に葉円板表面に塗布, 又は細菌浮遊液に混合処理すると, 付着率が半減した(RI法). これらのことから本細菌のキャベツ葉面に対する付着機構に熱不安定な菌体成分が関与している可能性が示唆された.
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