カリヤコマユバチに寄生されたアワヨトウ幼虫の体重増加量と摂食量は未寄生寄主に比べ減少した。しかし体重当りの摂食量は未寄生、寄生にかかわらずほぼ一定になることがわかった。また、ハチの産下卵数の増加に伴い、雄の割合が増加したが、一度だけ交尾させた雄を5齢寄主に間隔をおいて3回産卵させると、全産卵数はその都度変化したにもかかわらず、雌の数はほぼ一定となった。以上の結果、カリヤコマユバチは従来と異った性比調節を行っていることがわかった。 カリヤコマユバチの後期幼虫を培養すると4〜5日間は生存し、かつ幼虫皮膚体色がやや不透明になるなどin vitroにおいてもある期間成長、発育することが明らかになった。またハチの寄生により生じる寄生体内の生理的変化に関しては以下のことが明らかになった。1)寄生により寄主アワヨトウ幼虫は精巣はその精子形成、とくに精子変態が抑制された。2)寄生後6日目より寄主体液中に約90Kダルトンのタンパク質が特異的に現われるが、この寄生特異タンパク質は約18Kダルトンのサブユニットから成っていた。また、このタンパク質は寄生蜂に由来するテラトサイトが合成、蓄積するタンパク質とは分子量の点で一致しなかった。さらにハチの寄生により生じる寄主の蛹化抑制に関与する因子として、産卵時に寄生に注入される毒液およびカリックス液の他、テラトサイトも何らかの役割を果していることが示唆された。 カリヤコマユバチの寄生によりアワヨトウ幼虫の脱皮・変態阻害(蛹化阻害)が誘導される。幼若ホルモン(JH)の分析でアワヨトウの幼若ホルモンをJHIと同定した。幼虫一匹当りの含有量は0.14ngであるのに対して寄生幼虫では0.13ngであった。未寄生、寄生間における差異は認められなかった。今後は両寄主間においてJHIの経時間変化や代謝分解について詳細に検討することが課題である。
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