研究概要 |
ジャガイモ植物のジャガイモ疫病菌の感染に対する真性抵抗性の発現は, 感染細胞のNADPH依存O^-_2生成反応の活性化に起因する. この活性化は, 親和性レースの感染では見られず菌由来のβ-グルカンにより抑制される. この事象を基礎に真性抵抗性遺伝子に支配された機能蛋白質の分離とその性質を解析する一環として下記の解析をし結果をえた. 1.それぞれ4種の真性抵抗性遺伝子(R_1, R_2, R_3, R_4)をもつジャガイモ塊茎を供試し, それぞれよりミクロソーム画分および水性二層分配法でえた原形質膜画分を調製し, 無細胞系でのNADPH-O^-_2生成反応の活性化を検討した. ミクロソーム画分では, 過敏感反応の誘導活性をもつ菌体壁成分およびジギトニンでその活性化に成功したが, 原形質膜画分では不成功に終った. しかし, すでに活性化させた組織より分離した原形質膜画分ではその活性が検出された. このことより, NADPH-O^-_2生成系は原形質膜画分に存在することを示唆した. 2.ミクロソーム画分でのO^-_2生成反応の活性化と原形質膜画分でのO^-_2生成反応は, レース・品種特異的関係をもって, β-グルカンにより阻害されたので, O^-_2生成系に真性抵抗性遺伝子に関連した機能物質の存在することが示唆された. 3.原形質膜画分の蛋白質成分を可溶化し, HPLCおよびゲル電気泳動法で分離したが, 分離様相から品種特異的な蛋白質の存在は確認できなかった. しかし, β-グルカンをあらかじめ混合した可溶化膜蛋白質の分離では, 親和性菌由来のグルカン混合の場合に, 電気泳動パターンが変化する2〜3の蛋白質を確認した. 4.供試したβ-グルカンの純度が問題となり, 菌が感染した後に生産するβ-グルカンの分離を検討した. 透析膜に感染させた内液より, 比活性の強いグルカンが分離された. 5.今後, 精製したβ-グルカンを用いて, これと反応する原形質膜画分の蛋白性成分の分析をし, 真性抵抗性遺伝子支配物質を確定してゆく.
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