イネいもち病菌プロトプラストに及ぼす影響を目途に昨年度供試した23種の界面活性剤から選別した6種の活性剤を供試した。供試活性剤は非イオン性活性剤4種、ノニルフェニルエーテル(A)、ラウリルエーテル(B)、オレイルエーテル(C)、ステアリルエーテル(D)およびアニオン性活性剤2種、ジオクチルスルホサクシネート・Na塩(E)、ジブチルナフタレンスルホン酸・Na塩(F)である。これらがキュウリ及びウリ類炭疽病菌のプロトプラストに及ぼす影響を細胞学的に検討した。各供試剤でプロトプラストを処理し、光学顕微鏡観察した。非イオン性活性剤は、細胞膜に作用しプロトプラストを破裂させるグループ(A、B)とこの作用を示さないグループ(C、D)に分けられた。アニオン性活性剤はいずれもこの作用が極めて強いことが明らかになった。さらに、A及びBで処理すると、破裂前にプロトプラストが膨潤するのに対して、E及びFでは膨潤せずに突然破裂した。これらの結果から、非イオン性のA及びBは細胞膜透過性に作用するが、アニオン性のE及びFは細胞膜の構造そのものを破壊すると推定された。次に電子顕微鏡観察によって細胞質に及ぼす影響を検討した。非イオン性活性剤で処理したキュウリプロトプラストでは、いずれも葉緑体に顕著な形態異常が現れ、細胞質が疎になる傾向が強く、アニオン性活性剤で処理すると細胞は完全に破壊された。一方、炭疽病菌プロトプラストを非イオン性活性剤で処理すると、ミトコンドリアの膨潤やクリステの異常などの構造変化が現れ、細胞質基質には顕著な変化は現れなかった。しかし、アニオン性活性剤では細胞は完全に破壊された。総合的にみると、アニオン性活性剤は細胞膜や細胞質に激しい破壊作用を示すが、非イオン性活性剤はその作用が穏やかであると判断される。また、同じ濃度で処理しても細胞質に現れる影響は生物種によって異なることが明らかになった。
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