研究概要 |
1.カスキダニ(Ornithodoros moubata-Omと略)を用いて、幼若ホルモン(Juvenile Hormone-JHと略)とその誘導体及び各種化合物の卵黄タンパク質の前駆体ヴィテロジェニン(Vitellogenin-Vgと略)の合成誘導に及ぼす影響について調べた。2.先ずそのための検定法を確立した。即ち、各種薬剤処理後5日、10日後に体液(0.25μl)を採取し濾紙上にスポットし、反射吸光光度計付のクロマトスキャナーにより、400nmと450nmの吸光度の差を読みとることによって、Vgを正確に定量する方法を確立した。また処理10日後の卵巣の発達についても1〜8段階に分けてスコアーリングすることによって数量化した。3.JHIII、及び誘導体としてメソプレン(ZRー515)、Sー21149、Sー21150、Sー31183、を未吸血雌成虫1頭当り1,10,100μgの範囲で処理した。しかしいずれもコントロール(アセトン処理)と比較して有為な誘導効果を認めなかった。4.次に、昆虫でアラタ体活性の阻害剤として知られるプレコセン2を吸血雌1頭当り0.05〜2.0μg DMSDに溶解して局所施用し、吸血した雌成虫のVg発現を阻止する効果を検討したが、調査したいずれの濃度でもコントロール(DMSD処理)に対して有為な活性を認めなかった。5.神経分泌物の遊離活性を有するピレスロイド剤であるサイパーメスリン(CyMと略)の種々ステージ状態のマダニに処理し、Vg合成の誘導を調べた。その結果、CyMは雌はもちろん、雄や若虫でも吸血、未吸血及び交尾未交尾に全く無関係にVg合成を誘導することを確認した。6.前年度調製したマダニ(Om)の吸血6日後の脂肪体より得られたmRNAによって合成したcDNAライブラリーより、新たに複数のVg cDNAのクローンを分離し、それらの制限酵素地図の作製を行なった。7.結紮等を中心とした実験から、Vg合成を誘導する因子が総神経球中のペプタイドであることを明らかにした。
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