研究概要 |
ゴルフ場のコウライグリ-ンには、ピシウム菌の関与する2種の病害、すなわち不揃症(仮称)と春はげ症が発生する。前者は萌芽直後より、後者は萌芽前よりパッチが出現する。両症とも極めて防除が困難であり、本研究では両症の発生主因と防除方法について検討した。(1)春はげ症:本症発生グリ-ンより継続的に病原菌の分離を行ったところ、コウライシバの休眠期前後の11〜12月にフザリウム菌が、萌芽期頃の5月にピシウム菌が高頻度に検出された。分離フザリウム菌は、そのコロニ-タイプから3種に類別され、そのうちの2種でノシバ子苗に対する強い病原性が認められた。本症発生グリ-ンにおいて、11月にベノミル剤、5月にメタラキシル処理を行ったところ、高い防除効果が得られた。また、本症の発病に土壌条件が関係すると考えられたため土壌物理性(三相分布、透水係数)を調査した。病班部は健全部に比べて土壌の液相率が高く、気相率が低い傾向にあった。以上より、本症は休眠期前後のフザリウム菌、萌芽期頃のピシウム菌による復合感染であると結論された。また、通気透水性の悪い土壌条件で発生が助長される事が示唆された。フザリウム菌の同定は現売検討中である。ピシウム菌については、分離頻度と病原性からPythium graminicolaとP.vanterpooliiであると結論された。(2)不揃症:本症の発生時期にはPythium grminicola(Pg),P.Torulosum(Pt)およびP.vantepoolii(pv)が高頻度に分離された。ノシバ子苗を用いた接種試験でPg、Pvは10℃下で強い病原性を示したが、ptは5〜25℃で病原性はなかった。ピシウム菌に選択的に抗菌性の強いメタラキシルの萌芽期の処理は、本症の発生を完全に抑えた。以上より、本症の主因はPgとPvであり、萌芽期のメタラキシル処理で防除可能であると結論された。
|