土壌生成に及ぼす植物因子の役割を明らかにすることを目的に、現植被と土壌から分離した植物珪酸体集団との対応関係を植物珪酸体分析によって検討した。本年度は、九州、奄美大島、沖縄地方の非火山灰土壌表層から植物珪酸体を分離し、それらの珪酸体集団中の樹木起源珪酸体割合、イネ科/樹木起源珪酸体比について調べた。また、植物珪酸体分析を補強するために、各植物に由来する珪酸体の化学組成、酸、アルカリに対する溶解性などについても併せて検討した。 1)植被と表層から分離した植物珪酸体集団との間には、比較的明瞭な対応関係がみられた。すなわち、照葉樹林下の褐色森林土、赤色土および黄色土からは、イスノキ、スダジイ、タブノキ、常緑ガシなどの照葉樹林起源珪酸体が多数同定された。比較的安定した森林下の土壌は、樹木起源珪酸体比率が30%以上、イネ科/樹木起源珪酸体比が1以下であった。 2)イネ科草木と樹木葉部を混合したモデル実験では、イネ科/樹木起源珪酸体が1以下になるには、樹木葉がイネ科草本葉の24〜16倍混合時であり、それらの比は地上部にかなり長時間樹木葉が供給されないと1以下にならないことを実証した。 3)各植物由来の珪酸体の化学組成は、植物間でさほど変わらなかったが、樹木期限珪酸体はAl_3O_3とFe_2O_3がイネ科草木起源のそれより多い傾向にあった。植物珪酸体の風化抵抗性は、一般に酸に対して強く、アルカリに対して弱い傾向にあった。植物珪酸体の時間経過に伴う溶解量の変化は1〜2週間目まで溶解が進むが、その後は溶解せず平衡に達する傾向にあった。
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