研究概要 |
研究経過および主な実績は次の通りである. 1.酸性陸水中の酸性原因物質の検索および形態分析:pH4以下の強酸性を呈する河川・湖沼水の酸性原因物質は硫酸・塩酸のような強酸であるのに対して, それらが中和または希釈を受けてpH4以上になったときの酸性原因物質についてはなお不明の点が多いが, われわれは, 鳥海山・磐梯山周辺の酸性河川水・湖沼水についてイオン交換樹脂カラムクロマトグラフを用いる形態分析法を検討実施し, 主要原因物質であるヒドロキシアルミニウムイオンについて組成分析を行うと同時に, 陸水中ではこれにケイ酸が付加したヒドロキシアルミニウム・シリケート・イオンが存在することを認めた. 2.土壌酸性化過程の解析:希酸による粘土鉱物および土壌処理実験のデータに基づいて, 土壌の酸中和要素および酸性化の過程をI〜IVの4種に分けて解析を試みた. この解析パターンは酸性雨の土壌に対する影響検討の上に有効であって, わが国に広く存在するクロボク系土壌はアルミニウム化合物による酸中和能が大きいが, 同時にアルミニウムイオンを溶出しやすい事実を明確にした. 3.パイライトに由来する酸性鉱水湖の酸化過程:パイライト鉱山廃坑からは鉄と硫酸を含む酸性水が流出または湧出する例が多い. 岩手県松尾村「五色沼」もその一例である. パイライト鉱床の酸化溶解に由来する鉄(II)イオン, 硫酸, および由来不明の硫化水素を含む湧水によって涵養される小天然湖沼であるが, 鉄イオンおよび硫化水素の大気酸素による酸化過程には季節の推移との密接な関係があることが認められるが, 年ごとの変動の原因と経過についてはなお不明の点がある. これの経時観測を行い, 62年度分について必要なデータを集積すると同時に, スキュウバダイビンググループの協力により湖底調査を行った.
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