1.窒素固定活性発現機構の解析にあたり、有力な手段の1つとなるレグヘモグロビンの抗体調整を試みた。ダイズ根粒よりレグヘモグロビンタンパク質を精製し、電気泳動的に均一な10KDのタンパク質標品を得た。このタンパク質についてウサギ抗体を調整し、免疫二重拡散法によりレグヘモグロビン抗体であることを確認した。この抗体を用いてクサネムの茎粒および根粒レグヘモグロビンとダイズ根粒レグヘモグロビン間の相同性について調べたが、クサネム茎粒および根粒と抗体とのreactivityが極めて弱くレグヘモグロビンの相同性について確かな情報を得るには至らなかった。また前年に調整したダイズ根粒ニトロゲナーゼ抗体を用いクサネム茎粒、根粒およびダイズ根粒間の免疫化学的相同性について調べた。クサネム茎粒と根粒におけるニトロゲナーゼは極めて相同性が高く、ダイズ根粒のそれとは部分的に相同であることが明らかとなった。 2.クサネム茎粒から分離されたS-1菌株を用い、茎の部位毎による茎粒形成の難易について調べた。基部に近い節間および先端付近の節間では茎粒が形成されにくく、中央部の節間ではよく茎粒は形成された。茎粒の形成は皮目(lenticel)の発達と密接に関連していることが強く示唆された。茎粒形成に必要な菌の接種時間は1日間で十分であった。 3.クサネムの茎粒と根粒とのS^<15>Nはいずれも5〜6%の値をとり、両者で明確な差異は認められなかった。 4.クサネムに対し茎粒形成能力のあるリゾビウム菌株を選択するため、前年度に用いたセスバニア、ギンネムからの分離菌に加え、ラッカセイからの分離菌についても茎粒形成能力の有無を調べた。しかしいずれにおいてもクサネムに対して茎粒形成は認められなかった。
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