トウモロコシ幼植物などの典型的な亜鉛欠乏症状は、茎の伸長阻害である。 この現象の発現機構を究明し、高等植物における亜鉛の生理機能の一つを明かにすることが本研究の目的である。高木のこれまでの実験結果によれば、茎の伸長に関係が深いと考えられているインドール酢酸は、亜鉛欠除区の植物体中においても、正常に存在していることが明らかである。 したがって、本研究は、茎の伸長に関与しているもう一つの植物ホルモン-ジベレリン-の動態を、亜鉛栄養との関連で明らかにすることを目的としている。方法:トウモロコシ、トマト、オオムギ、ハツカダイコンなどを供試し、水耕法により、亜鉛欠除区、亜鉛欠乏を発現させておいたものに、亜鉛添加(Zn 2ppm)を行い、急激な茎伸長区および正常区の計3区を設けた。経時的にサンプリングし、それぞれについて、酢酸メチル抽出を行い、阻ジベレリン様物質を得、"タンギンボウズ試験法"によって、ジベルリン様物質の量を算出した。 結果と考察:1.亜鉛欠徐区幼植物中には、ジベレリン様物質の活性がほとんど認められないこと。茎の伸長が回復したものには、再びジベレリン様物質の活性が現れることなどの現象を確認した。目下、ガスクロマトグラフィを応用して、ジベレリン様物質の化学的性質を究明中である。2.茎頂部のカルス化には、亜鉛が重要な因子であることを示唆する結果がえられた。また、カルスからの再分化過程には、ジベレリンが深く関与していることが判明した。 今後の研究の展開:カルス化誘導に補助因子として、亜鉛が関与しているとすれば、亜鉛を含まない液体培地にカルスをうえつぐことで、再分化を容易に引き起こさせることが可能となる。この点を中心に実験をすすめたい。
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