昭和63年度の研究経過は、ほぼ交付申請書の研究実施計画に沿って進められた。すなわち土壌の荷電特性については研究代表者の転任のため研究目的のため購入したイオンクロマトグラフが使用不可能となった。しかしその他の項目については以下の成果が得られた。 1.今年度新たにフィジー、バヌアツおよび西サモアの試料について、それらの一般的理化学性が明らかとなった。とくに西サモアの試料では、オキシソルへの移行段階と考えられる鉄(ゲーサイト、ヘマタイト)とアルミニウム(ギプサイト)に富む火山灰土壌の存在が明らかとなった。このことは分類上意義深いと思われる。 2.フィジーとバヌアツの試料については、ほぼ我国の土壌と似た性質を示したが、これは熱帯・亜熱帯の気候下でも母材が若ければ温帯気候下の火山灰土壌と同様な風化過程を通ることを示すものと考えた。 3.腐植の存在形態については、ピロリン酸抽出に関する限り温帯のものとよく似た組成(アルミニウムと鉄の合量/炭素量)を示した。ただし西サモアのように非晶質のアルミニウムや鉄の多い試料では、ピロリン酸で抽出する際分散した形態の除去が必須であることが明らかとなった。 4.腐植の腐植化度は、一般に我国のものより低く、態田の分類ではB型あるいはP型が多く存在した。 5.試料に存在する粘土鉱物のうち、非晶質成分について選択溶解処理を行ないその形態を化学分析と赤外吸収スペクトルによっ同定することを試みた。その結果、とくに西サモアの土壌で、従来から報告されているアロフェン、フェリハイドライトあるいは結晶度の非常に悪いハロイサイトなどとは異なる合水鉄アルミニウムゲルの存在が示唆され、今後の研究が期待される。 6.腐植の集積は主にピロリン酸抽出の鉄とAlによって支配されていた。
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