研究概要 |
蛋白質修飾酵素, ペプチジルアルギニンデイミナーゼ(PADase)はアルギニン残基をシトルリン残基に変換する新しい酵素で, 蛋白質の正電荷を減少させ, 核ではクロマチン結合性である. これを背景に遺伝子発現に関与すると推測されるクロマチン蛋白質に対する作用について検討を加えた. 1.PADase感受性非ヒストンクロマチン蛋白質(NHPと略)の検出と同定: 仔牛胸腺分離核よりNHPを調整し, またウサギ骨格筋より調整したPADaseをSepharose4Bに固定した(収率60%). 上記NHPをPADase-Sepharose4B固定化カラムに4゜Cで作用後, Low Mobility Group(LMG)とHigh Mobility Group(HMG)に分画した. 両画分のアミノ酸分析は, 6NHCl, 150゜C, 60分水解後, PTC-アミノ酸とした後, C-18HPLCにより分離定量した. その結果, Arg残基のCit残基への変換率はLMGでは3.4%, HMGでは11%であり, HMGがPADase感受性蛋白質であることが判った. そこで次に仔牛胸腺より0.75MHclO_4によりHMGを抽出, アセトン沈澱として集めた後, 同酵素を1〜2hr, 37゜Cで作用させた. 修飾HMGをC-18HPLCにより分画し, ポリアクリルアミド電気泳動法により同定し, HMC1とHMG2に分画した. それぞれにつきアミノ酸分析の結果, Arg残基のcit残基への修飾率は, HMG1では25%, HMG2では40%であった. 以上の結果, NHPに含まれる同酵素感受性蛋白質はHMG1および2と同定された. 2.転写活性型クロマチンおよび不活性型クロマチンの分画とシトルリンの分析:ラット肝臓よりクロマチンを分離し, Yamasuら(1986)の方法により転写活性および不活性型クロマチンを分画し, それぞれのヒストンのアミノ酸分析の結果, citは検出されなかった. また, それぞれのNHPについては, 蛋白質量に再現性が得られず, citの定量分析は不能であった.
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