ペプチジルアルギニンデイミナーゼ(以下PADaseと略記)はCa^<2+>の存在下において蛋白質のArg残基を脱イミノしCit残基に変換する新しい蛋白質修飾酵素である。筆者らは先にマウス骨格筋PADaseがSH基特異的修飾試薬によって迅速に失活することを見出したことから、このような化学修飾法によるPADaseの活性中心構造の解明を立案した。昭和62年度は、各種の修飾試薬の中でiodoacetamide(以下IAAと略記)が低濃度でかつ迅速に上記酵素を不活性化することやこの不活性化反応は基質とCa^<2+>の共存下においてのみ完全に阻止されることが判かり、IAAがPADaseの活性中心残基を修飾することが判明した。つぎにpH変化に伴うIAAの不活性化反応の動力学的検討の結果、この反応には遅い反応(R21K=0.32〜0.75×10^2M^<-1>・min^<-1>)と速い反応(k_2/K=5.12×10^2M^<-1>・min^<-1>)が存在することを見出した。またIAA修飾および末修飾PADaseのアミノ酸分析に結果、2つのCys残基が修飾されていることが判かりPADaseにIAAに対し超反応性の2つのCys残基が活性中心部位に存在し、両残基は解離定数が異なると判断した。昭和63年度は、マウスPADaseを〔^<14>C〕1AAで標識後、還元カルボキサミドメラル化しついで真化シアンによるフラグメンテーションを行った。各フラグメントをセファデックスG-50のゲル濾過により分画した結果、約7kDaの2つのペプチドに放射活性が認められ、ついでこれらをリジルエンドペプチダーゼ水解により限定分画後Asahipak ODP-50逆相系HPLCのペプチドマッピングを行った。それぞれのペプチドマップ上に各1つの放射活性を有するペプチドが得られたことから、そのアミノ酸組成およびアミノ酸配列分析を行ない次のような結果を得た。NH_2-Ala-Ser-Trp-Thr-Trp-Gly-Pro-Asn-Gly-CmCys-(Asx3、Glx2、Arg、Ala、Pro、Val、lle、Lcu3、Phe)-Lys-CooH、NH_2-Thr-Pro-Asn-lle-Lcu-Pro-Pro-Val-Ser-Val-Val-(Asx2、Glx、CmCys4、Ser、Gly、Thr、Ala、Pro2、Val、lle、Phe2)-Met-COOH これらがPADaseの活性中心構造と思われる。
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