本研究は、インスリン様成長因子I(ソマトメジンC、1GF-I)がタンパク質栄養において、どのような機能を果しているかを明らかにしようとするものである。得られた結果は次の通りである。 1)質および栄養価の異なる食餌タンパク質を与えたラットの肝臓からRNAを抽出し、Northern blot hybridizationの方法を用いて、IGF-ImRNA量が多かったが、質の悪いタンパク質を与えたり、無タンパク質食を与えたラットでは、mRNA量が極めて少なかった。ラット肝臓には、1GF-ImRNAの種類が少なくとも6種類あるが、特に分子量の大きい種類のmRNA量の減少が著しかった。また、nuclear run-off testによって、上記のラットの肝臓の核における1GF-ImRNAの合成能を調べたところ、食餌間に有意な差はなく、質の悪い飼料を食べている動物の肝臓でmRNA量が少ないのは、mRNAの合成よりも、安定性の違いによるものと結論した。 2)これらの結果を、細胞レベルで調べるため、初代培養肝細胞を用いて、1GF-Iの分泌に影響する因子を調べたところ、アミノ酸欠乏培地に細胞を置くと、1GF-ImRNAの量が極めて少なくなることが明らかになった。 以上の結果から、肝臓における1GF-Iの合成は、転写、翻訳、mRNAの安定性によって複雑に制御されていることが明らかになった。
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