ソマトメジンC(別名インスリン様成長因子I、以下IGF-I)は、成長ホルモンと食餌条件両方の支配を受けて、主に肝臓が分泌するホルモンである。本研究は、このホルモンのタンパク質・アミノ酸退社における意義を明らかにすることが目的である。 まず、食餌タンパク質が、血中のimmunoreactive(ir)IGF-I量におよぼす影響を調べた。ラットに、カゼイン食、小麦グルテン食、トウモロコシタンパク食、無タンパク食を与え、irIGF-Iを測定したところ、カゼイン食で最も高く、無タンパク食でその1/3程度であり、その他のカゼインに比べ栄養価の低いタンパク質食では中間の値を示した。小麦グルテン食に欠乏しているリジンとトレオニンを補った場合、またトウモロコシタンパク質に欠乏しているトリプトファンとリジンを補った場合は、有意なirLGF-Iの増加が認められた。一方、食餌タンパク質は、IGF-Iの血中存在状態にも影響を与え、栄養価の高いタンパク質を与えたラットでは、分子量15万のIGF結合タンパク質に結合しているIGF-Iの量が血中に多かった。一方、タンパク質栄養の状態が悪い場合は、血中の分子量4万の結合タンパク質に結合しているIGF-Iの量が減少した。 タンパク質の栄養状態は、肝臓中のIGF-I-mRNAの量にも大きな影響を及ぼし、栄養状態の悪い場合は、その量は少なく、良い場合は多かった。さらに、全身のタンパク質合成量と血中のIGF-Iの量との相関を調べたところ、両者に高い相関性が認められた。このように、IGF-Iは動物のタンパク質栄養の状態をよく反映した。この結果は、健康状態の判定や、病者の栄養状態のアセスメントに大きな貢献をするものと考えられる。
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