研究概要 |
鶏卵は巨大な細胞である. 鶏卵には胚防御のしくみや, 発生のための栄養供給の機能を備えている. 本研究は貯蔵タンパク質分解のしくみを卵黄タンパク質をモデルとして解析したところ, 卵黄中に新規のアミノペプチターゼを発見したことによる. アミノペプチターゼの卵黄内局在性は, 卵黄プラズマ画分中に約87%が, 40,000×g4h遠心分画のグラニュール画分に約13%が存在した. この二形態の酵素分子の酵素化学的性質を検討した. プラズマ画分より450倍に精製した酵素は分子量360,000であったが, グラニュール画分から食塩により可溶化した酵素の分子量は700,000であった. 以上の二形態のアミノペプチターゼは酵素的にはやや異る性質を示し, 蛍光基質Leu-MCAに対しプラズマ酵素は最適pH6.5, グラニュール酵素は最適pH7.8であった. 熱安定性については, プラズマ酵素は60°C, 10分処理で残存活性は80%, 70°C, 10分処理で0%となるのに対して, グラニュール酵素は60°C, 10分処理で160%, 70°C, 10分処理で残存活性40%であった. 両酵素は分子量的な相異のみならず, 熱に対する安定性の差からその存在形態に大きな差があるものと推定された. プラズマ画分の酵素のKm値は0.01mM, グラニュール画分の酵素は0.8mMであった. 両酵素の気質特異性について, 低分子蛍光基質, 発色基質により検討したところ, 両酵素ともLeu-MCAとLeu-pNAによく作用した. ペプチド基質についてはLeu-Gly-Glyならびにエレドイシン関連ペプチドに作用してアミノ酸を遊離した. 両酵素ともキレイト試薬により阻害され, CO^<2+>で再活性化した. 本研究は, 非常に鋭敏な蛍光基質, 発色基質の応用によりはじめて見出されたものである. 鶏卵の発生過程における本酵素の動態解析は従来知られなかった境地を拓きうるものと思われる.
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