研究概要 |
鶏卵は巨大細胞である。鶏卵には胚防御のための物理的、化学的しくみがそなわっている。また、発生のために卵中の貯蔵成分を分解して栄養物質として供給するしくみがそなわっている。本研究は貯蔵タンパクの質の分解のしくみを卵黄タンパク質をモデルとして解析したところ、卵黄中に新規のアミノペプチダーゼを発見したことにはじまる。 鶏卵卵黄中のアミノペプチダーゼ活性は極めて微弱のために、通常の分析手段では判別しにくかった。蛍光性のロイシン-4-メチルクマリン-7-アミド(Len-MCA)、並びに発色性のロイシン-パラニトロアニリド(Leu-pNA)の使用により活性の存在が明らかとなった。本酵素活性がアミノペプチダーゼであることの確認は、エレドイシン関連ペプチドに作用しアミノ酸を遊離することから証明した。 鶏卵卵黄中のアミノペプチダーゼはプラズマ画分に95%、グラニュール画分に残りが存在した。プラズマ画分からのアミノペプチダーゼの精製は困難を極めたが、卵黄プラズマ画分のエーテル抽出水層、硫安塩析、2回のオクチルセファロース、2回のトヨパール、2回のDEAE-トヨパールなどのクロマトグラフィーにより電気泳動的に均一な酵素標品を得た。比活性は51,400μkat/kgタンパクで、プラズマ画分より13,120倍に、卵黄より実に85,000倍に精製した標品を得た。プラズマ画分の酵素の分子量は360,000最適pH6.5、Kmは0.01mM、70℃10分の熱処理で完全に失活した。いっぽう、グラニュール画分の酵素は食塩抽出後ゲルろ過で部分精製した。この画分の酵素は分子量700,000、最適pH7.8Km0.8mM、60℃10分処理で160%に活性化し、70℃10分処理で残存活性40%をしめした。 鶏卵卵黄中に二形態で見出されたアミノペプチダーゼが、お互いにどのような関係にあるのか、発生の過程での変化は今後の問題である。
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