研究概要 |
C_1供与体であるコリンの欠乏時に, C_1代謝に深く関与するPQQ(ピロロキノリンキノン)の投与実験を行い, 動物体に対するPQQの作用とコリン欠乏状態での肝コリン脱水素酵素活性CCDHと略記), 肝・腎・小腸粘膜におけるジアミン酸化酵素活性(DAOと略記)を調べ, PQQがこれらの酵素活性を変えるか否かを調べた. ウィスター系雄ラットを1群6匹のずつ6群に分け, 2群にコントロールとしてPQQの除去操作を施したカゼイン食を, 2群にRoger&Haperが報告した組成のアミノ酸食を, また, 2群にアミノ酸食+1mg/kgPQQのPQQ食を与え, 成長曲線を調べた. 実験開始後, 14及び28日目に1群づつを殺し, 採血, 肝・腎・小腸を摘出し, タンパク質・脂質の定量やCDH, DAO活性を調べた. 実験は都合2回行った. 実験機関中の体重増加曲線からアミノ酸食及びPQQ食では約70%の成長しか得られなかったが, 肝肥大が著しく, 典型的な脂肪肝を呈した. 肝臓における脂質の絶対量はコントロールに比べ, 5〜10倍であった. この傾向は, ミネラルの配合割合を若干修正した2回目の実験でも変らず, 体重増加曲線の改善とは比例しなかった. 尚, コリン欠乏は腎の病変をまねくと報告されているが, 外見的に腎の変性は認められなかった. 肝CDH活性は, いずれの群においても, 正常飼育ラットと大差はなく, エチオニン投与時の変化とは異なる傾向を与えた. 腎及び肝のDAO活性は低く測定限界値に近く評価できない. また, 小腸粘膜のDAOの測定結果からは, 3群間に有意な差は認められず, コリン欠, PQQ投与の影響はないものと思われる. 今後, 無菌動物を用いて, 腸内細菌の影響のない系を用いて, これらの実験を行うことにより, 哺乳動物体におけるコリン代謝とC_1代謝に関係する酵素系の変動を調べる予定である.
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