生後4〜5週齢の無菌ラット(ウィスター系、雄)を用いて、コリンを含まない完全合成飼料により飼育実験と肝臓、腎臓及び血液に関する状態を調べ、PQQ(ピロロキノリンキノン)の添加効果を調べた。しかし、PQQを1ppm飼料中に添加した群のラット(全部、3匹)が飼育実験中に死亡してしまい、生化学的検査を行なうことが不可能であった。 そこで、第2回目の投与実験として、コリンを充分に含む飼料でのPQQ添加効果を調べた。しかし、この実験においても、飼育期間中に、PQQの添加の有無にかかわらず、死亡し始めた。死亡したラットの剖検から、小腸や筋肉中に出血が認められ、また、生存中のラットも後肢を引きづるなどビタミンK欠乏症と酷似した症状を呈したため、実験途中ではあったが、適量のK_3を含むビタミンフリーカゼイン混合物を添加したところ、以後死亡する例はなくなり、症状も改善された。従って、実験期間を延長して41日目に生化学実験に移した。主な検査項目は肝臓中のコリン脱水素酵素(CDH)活性と小腸粘膜中のジアミン酸化酵素(DAO)活性である。PQQを3.2ppm添加した群の成長率が無添加に較べ若干低いようであったが、CDH活性、DAO活性、特に、比活性で比較した場合両群間に有意差があることは認め難かった。また、コリン欠飼料で飼育した第1回目の実験の場合、完全合成飼料投与で、著るしい脂肪肝となることがわかったが、コリンを添加した第2回目の実験では、脂肪肝も認められなかった。 以上の実験事実は、PQQはラットにとって必須栄養素(ビタミン)ではなく、ラットの生体中で合成されている物質であると推論した。前後2回の飼育実験で、実験目的以外の項目で問題が発生したため、今回の実験から最終的結論を導くことは保留したい。これらの問題点を克服した系で再実験し、結論としたい。
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