C_1供与体であるコリンの欠乏時に、C_1代謝に深く関与するPQQ(ピロロキノリンキノン)の投与実験を行い、動物体に対するPQQの作用とコリン欠乏状態での肝コリン脱水素酵素(CDHと略記)活性、肝・腎、小腸粘膜におけるジアミン酸化酵素活性(DAOと略記)を調べ、PQQがこれらの酵素の活性を変えるか否かを調べた。 実験方法としては、普通状態で飼育したラットにコリン欠飼料を作り、その中にPQQを加えたものと加えないものについて投与実験を行い、成長等について調べ、飼育実験終了後、CDH及びDAOの活性について調べた結果、アミノ酸を主とする完全合成飼料を与えられたラットは、顕著な脂肪肝をまねいたが、ビタミンフリーカゼインを主とした飼料では、コリンの欠乏にもかかわらず脂肪肝にはならなかった。また、いずれの実験群でも、CDH、DAOのタンパク質量当りの比活性で比較した場合、有意な差は見出し得なかった。この理由は、普通ラットの場合、腸内細菌によってC_1化合物が合成されるためと推測し、腸内細菌の影響のない無菌ラットを用いて、再度実験した。 無菌ラットによる飼育実験の場合、コリン欠乏の影響はきわめて顕著で、特に、飼育実験途中にPQQ添加系(アミノ酸を主とする完全合成飼料)のラットが全部死亡してしまい、生化学的検査ができなかった。そこで、コリンを添加した完全合成飼料でPQQの添加効果を調べる実験を行った。ところが、実験途中でラットが死亡し始め、この死亡の原因は、剖検から、ビタミンK欠乏症に類似のものであった。実験飼料にビタミンK_3を追加して飼育実験を続けた。その結果、死亡する例はなくなった。結果的に、PQQの添加効果は、CDH、DAO(この実験では小腸粘膜中の酵素活性のみ測定)に有意の差は見出し得なかった。
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