研究概要 |
1サトイモの抵抗反応に関する研究 サトイモが黒斑病菌(Ceratocystis.fimbrista)に感染すると抗菌性物質を生成することを我々は見出していた。本年度この抗菌性物質の1つを罹病サトイモより単離し、その構造を9,12,13,trihydroxy octadec-10-enpic acidと決定した。この構造より本物質はlinolenic acidが過酸化反応を受けて生じたものと推定される。事実linolenic acidにダイズより分離したlipooxidaseを作用させると黒斑病菌に対して抗菌活性を示す物質が生成される。感染に伴いサトイモ組織中では不飽和脂肪酸の過酸化物の量が顕微に増加すること、さらにこの過酸化反応を触媒するlipooxidase活性が増大していることもすでに明らかにした。これらの結果より不飽和脂肪酸の過酸化反応がサトイモの抵抗反応に於て本質的な役割をはたしていることが示唆されたので、今後より詳しくこの点を検討していく予定である。 2抗菌性フェノール成分の生合成に関する研究 (1)前年度行ったクロロゲン酸生合成経路解明のためのトレーサー実験に於て、未同定のt-cinnamic acid-2-^xCの代謝物が検出された。そこで本年度はこの代謝物を分離し、その同定を試みた。本物質はTLCでの挙動やその他の性質よりP-Coumaric acidのglycosideと推定されるが、現在それを確証すべく、NMR用の試料を調製している。 (2)P-Coumaric acidの水酸化に関する研究 前年度もやし豆実生中に新酵素P-Coumaric acid hydroxylaseを発見し、その性質を調べた。本酵素は膜結合酵素であるので精製のためには可溶化が必要である。現在この可溶化の条件を検討している。
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