研究概要 |
本研究は発芽ヒマ種子におけるプロテインボディから液胞への変換を, 特にそれらオルガネラの膜系の変化に着目して, 比較検討することにより, 膜融合を引きおこすメカニズムを分子レベルで解明することを目指すものである. 今年度の研究により以下のことが明らかとなった. 1.ヒマ種子の貯蔵蛋白質の1つである11sグロブリンはrER上でprepro型として合成された後, co-translational processingを受けてproglobulinに変換する. 次にproglobulinはプロテインボディの可溶画分に存在する酵素により, post-translational processingを受けて, 成熟型のグロブリンになることが判明した. この11sグロブリンの細胞内輸送のメカニズムはカボチャ種子で観察されたものとほぼ同様であると考えられる(Plant Cell Physiol 1988 in press). 2.乾燥ヒマ種子からグリセロール法により, プロテインボディを多量に調整し, 超音波処理によりオルガネラを破壊した後, 蔗糖密度勾配遠心法により, プロテインボディ膜を調整した. 得られた膜画分のSDS-ポリアクリルアミド電気泳動による解析から, 4種の主要膜タンパク質80kDa, 28kDa, 26kDa, 24kDaが同定され, これら4種の膜タンパク質の特異抗体が調整された. 80kDa, 26kDa, 24kDaのタンパク質は糖タンパク質であること, 28kDaタンパク質はTriton x-114の二層分配において, Triton層に検出される極めて疎水性の高いタンパク質であることが判明した(植物生理学会発表). 3.80kDaのタンパク質は, 種子の発熟期に11sグロブリンとほぼ同様のパターンで合成, 蓄積され, 種子の発芽期には, プロテインボディの融合に伴って, 消失することが判明し, プロテインボディの融合にこの80kDaタンパク質が関与していることが示唆された(植物生理学会発表). 今年度の研究遂行において, 購入した分光光度計は順調に作動している.
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