研究概要 |
サツマイモチトクロムオキシダーゼに関する研究, 特に組織特異性に関する研究の中で, 本年度は以下に述べる3つの成果を得た. I 核遺伝子支配サブユニットVcのcDNAクローニング. 酵素分子の組織特異性を遺伝子あるいはタンパク質分子のレベルで解析することを目的に合成オリゴヌクレオチドをプローブとしてVcのcDNAクローンを得, 塩基配列を決定してVcタンパク質のアミノ酸配列を推定した. その結果, (1)Vcは64個のアミノ酸から成り, 推定分子量は電気泳動を求めた値6.2KDと同じであった. (2)Vcの中央部分には15個の疎水性アミノ酸から成るストレッチがありこの部分を介して内膜を貫通していると考えられ, Vcはサブユニットの会合を橋渡しする機能を持っていると推定された. (3)サツマイモのサブユニットVcは, 酵母酵素のサブユニットVIIa, ウシ酵素のサブユニットVIIとアミノ酸配列上の相同性(約40%)および構造上の類似性がみられた. また得られたcDNAはサブユニットVcの組織特異性を遺伝子レベルで解析する上で, 大変有効なプローブとなる. II 組織特異性に関する酵素学的解析. サツマイモ塊根および塊根を発芽伸長させて得られる茎からそれぞれミトコンドリアを単離して, チトクロムオキシダーゼの熱に対する安定性を検討したところ, 塊根の酵素は茎のものより熱に対して有為に安定であった. またリン脂質の影響を排除するために各組織のミトコンドリア内膜から酵素を可溶化処理した後熱安定性を検討したところ, やはり塊根の酵素は茎のものより安定であった. このことは, 酵素(サブユニット)分子自身の相違による可能性があると判断した. III ミトコンドリアDNA支配のサブユニットIIについて, アミノ末端の35のアミノ酸配列を決定して, 他の植物, 酵母, 動物のもの(推定配列)と比較したところ高い相同性がみられた.
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