1.中等度好熱菌Bacillus stearothermophilus NCA1503の凍結保存菌体からL-バリンに特異的なアミノアシルtRNA合成酵素(EC6.1.1.9)(以下VRS)を電気泳動的に単一にまで精製した。このVRSと蛍光性のATP誘導体(3'-0-anthraniloyl ATP;以下Ant-ATP)との相互作用を解析したAnt-ATPがVRSによるL-バリン-tRNA合成の基質となることを初めて見いだした。VRSとの結合に際してAnt-AYPの蛍光が変化することを見いだし、これを指標として蛍光滴定を行い解離平衡定数を定めた。更に、この蛍光変化を指標としてストップトフロ-法を用いて両者の結合過程を追跡し、この結合過程が少なくとも2段階(速い2分子結合過程と遅い1分子異性化過程)からなることを明らかにし、その速度論量を求めた。 2.上記と同じ菌体から、L-リジンに特異的なアミノアシルtRNA合成酵素(EC6.1.1.6)(以下LRS)を、粗抽出液からの精製度約1000倍・活性回収率約30%で、電気泳動的に均一な標品として精製した。本LRSは、分子量約6万の均一なサブユニットからなる分子量約12万の二量体であることをゲル濾過法およびSDS電気泳動法により示した。アミノ酸活性化反応及びtRNAアミノアシル化反応における速度論量を求めた。平衡透析法、蛋白質蛍光の変化を指標とする蛍光滴定法、および定常状態速度論的測定の結果を総合して、アミノ酸活性化反応においては、(1)LRSには先ずL-リジンが結合し次いでATPが結合すること、(2)LRS二量体当たり2個の均等な活性部位のうち平均して1個のみが触媒作用を示すこと、(3)ATPの結合によりアミノ酸基質の側鎖の構造に対するLRSの識別がより厳しくなることを明らかにした。
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