1.本年度にひき続き乳癌細胞特異的抗体を産生するヒト型ハイブリドーマを作製し、新たに数株のヒト型ハイブリドーマを得た。これらのハイブリドーマが産生する抗体が認識する乳癌細胞特異的抗原の検出及び分離精製を行い、複数の乳癌細胞特異的抗原の存在を認識した。 2.ヒトNamalwa細胞が産生する抗体産生促進因子(IPSF)の分離精製を続行し、分子量約10万のたんぱく質にIPSF活性を認めた。 3.ヒト型ハイブリドーマに対しIPSF活性を示す因子についてさらに検索し、ラクトフェリン、スキムミルク及びその主成分であるガゼイン、ニワトリ卵黄リポタンパク質(YLP)等が活性を有することを確認した。 4.上記IPSFの細胞特異性について検討し、YLP以外のIPSFはIgMを産生するヒト及びマウスのハイブリドーマに対し活性を示し、IgG産生細胞に対しては活性を示さないことを明らかにした。YLPはIgM産生細胞に対し強いIPSF活性を示し、IgG産生細胞に対しても活性を示した。以上の結果はハイブリドーマのIgM産生系はIgG産生系とは異なる制御を受けていることを示唆した。 5.ヒト型ハイブリドーマの無血清高密度培養による抗体の大量生産について検討した。Namalwa細胞から分離されたNAT-30細胞を親細胞とするハイブリドーマはNamalwaIPSFを生産しており、10^7細胞/mlの高密度培養においても高い細胞生存率及び抗体産生能を維持することができた。一方、HO-323由来のハイブリドーマは高密度に達すると細胞の生存率及び抗体産生能が低下しやすく、細胞種により高密度培養への適応性が異なることが明らかとなった。この差は10^6細胞/ml以下の低密度培養では認められず、高密度培養の最適化を行うためには実際に高密度培養を行う必要があることが明らかとなった。
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