本研究の目的は、メタン生成細菌M.thermoautotrophicumの脂質の構造解析により、この菌のテトラエーテル型脂質の法則性を明らかにすることであり、初年度においては既にquartet法則性が成立することを確認していたエタノールアミン脂質群に加え、ホスホセリン脂質群およびイノシトール脂質群においても、そのリン酸エステル部分の立体構造の共通性は未決定ではあるがその他の構造においてはquartet法則性が成立つことを確認した。この結果をふまえ、当該年度においては、以下に記した研究を行いquartet脂質群の概念を確立した。 1.ホスホセリン脂質群およびイノシトール脂質群におけるリン酸エステル部分の立体構造の共通性の解析 Quartet脂質群の概念が成立つためには、Xの極性頭部の立体構造まで各脂質間で共通している必要がある。立体異性が存在しうる構造を持つホスホセリン脂質群およびイノシトール脂質群の個々の脂質の極性頭部の立体構造の解析を行い、各群を構成する脂質の間でそれが共通であること、即ちquartetの法則性がこれらの脂質群においても成立していることを明らかにした。 2.Quartet脂質群概念のheptad脂質群概念への発展 Quartet(4つ組)脂質群はテトラエーテル型脂質4種を1単位とするものであるが、これらの脂質の解析と同時に行なったジエーテル型脂質の構造解析により、ジエーテル型脂質においてもその極性頭部の構造が、立体構造まで含めてテトラエーテル型と同じものが存在することが確認され、quartetの概念がheptadにまで広げられた。この結果、この菌のエーテル型脂質の全体像がheptad脂質群として把握されることが明らかになった。
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