研究概要 |
キトサン1%を含む液体培地による集積培養と, 同じくキトサン1%を含む寒天培地を用いるスクリーニングを組合せ, 土壌試料中からキトサナーゼ生産微生物を検索した. キトサン寒天平板上に生ずる溶解斑の大きい菌株の中から適切な細菌1株を選定し, 細菌学的固定を行ない, グラム陰性, 好気性胞子形成〓菌をBacillus circulans MH-K1と命名した. この菌株によるキトサナーゼ生産の最適条件を設定し, キトサン1%を含む液体培地で3日間の振盪培養により培地中にキトサナーゼを生産させた. 菌体を遠心分離により除去した上清を硫酸アンモニウム0.7〜0.9飽和により酵素を分画沈でんさせた. この操作により, この菌の生成する粘質物を除去することができた. さらにイオン交換およびゲル濾過クロマトグラフ法によりポリアクリルアミドゲル電気泳動で均一な標品にまで精製した. 精製キトサナーゼは分子量約30000, キトサンに対するKmは0.63mg/ml, 最大活性はpH65, 50゜Cで得られ, 0〜40゜C, pH4.0〜9.0の範囲で安定であった. この酵素はキトサン, グリコールキトサン, CM-キトサンには作用するが, 同じβ-1.4-グルカンでもキチンとその誘導体やCM-セルロースには作用しなかった. キトサンの脱アセチル化度は酵素活性にいちじるしい影響を与え, 80%脱アセチル化度をピークとして,これより脱アセチル化度が高くても, 低くても活性は低下した. このことはこのキトサナーゼが基質キトサンを認識するとき, キトサン分子中のN-アセチルグルコサミン残基の存在が重要な意味を持つことを示唆している. この酵素によるキトサンの最終分解生産物はセルロース薄層クロマトグラフ法の結果によれば, グルコサミンの2量体と3量体の混合物であり, 単量体の生成は認められなかった. またグルコサミンの4量体以下のものは基質とはなり得ず, 糖転位作用も認められなかった. 作用型式はエンド型であった.
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