研究概要 |
カルバペネム生産菌であるStreptomyces fluvoviridisの変異処理により得た非生産株間のco-synthesis現象を解析した. その結果, 生合成ステップに関わると考えられる5グループと, この径路にのらず, 胞子気菌糸形成能も欠失し, すべてのblocked mutantにより回復を受ける変異株(FN27とFN104)とに分類された. 我々のこれまでの研究で, 生合成径路初期段階の非生産株と思われるFN24を受容菌とすることにより, カルバペネム生産を回復する断片(6-Kb)がクローン化されたが, その断片のうちの1.7KbのBamHI-PstI断片がFN27の抗生物質生産性を回復させ, あわせて胞子形成も部分的に回復させることが判明した. FN104はFN27とco-synthesisをおこし, お互いを相補しあうことから, 異なる変異株であることが確認された. FN27およびFN104は他のすべてのblocked mutantや, おもしろいことに異種放線菌(放線菌中2/3くらい)の培養上清により回復を受け, しかも同一物質が関与しているであろうということがTCL分画により推測された. また同時に, 同一画分が異種放線菌(例えばStreptomyces enythreus)の胞子非着成株に対しても有効であるとの結果も得た. 我々は, ある物質が放線菌における二次代謝調節物質として普遍的に係わっている可能性を想定し, また抗生物質生合成クラスターの中にこうした物質の作用機構に密接に関係するであろう領域が存在することに興味を持ち, 回復物質の精製, 構造解析を行い, 調節機構の中でFN27遺伝子が関わる役割について検討した. S.fluvoviridis培養上清中, 回復物質は分子量5万以上の蛋白-低分子複合体として存在しているらしい. プロナーゼ処理あるいは1M尿素処理により低分子化され活性が上昇するので, 活性物質としての低分子化学物質の精製を現在進めている.
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