研究概要 |
1.擬結晶構造構成蛋白質の構造特性に関する解析 B.brevis47は擬結晶構造を示す2層の蛋白質層を細胞壁上に有しており, 細胞最外層よりOuter Wall層, Middle Wall層と命名されている. 両蛋白質遺伝子の全塩基配列が決定され, 塩基配列から類推されるアミノ酸配列に基づき蛋白質の特性を解析した. Outer Wall Protein(OWP), Middle Wall Protein(MWP)は1)非極性アミノ酸を多く含み, また塩基性アミノ酸に比べて酸性アミノ酸に富む, 2)含硫アミノ酸は少量しか存在せず, Csyは全く含まれていない, 3)等電点から判断して酸性蛋白質である等において共通していたが, 電荷アミノ酸の分布及びハイドロパシーは非常に異なっていた. MWPは量的にも質的にも親水性領域に富んでいた. また1次構造から予測される2次構造についてもその組成自体は両蛋白質で似ているが, そのパターンは著しく異なっていた. 2.改変MWPを用いた擬結晶構造体の再構成 全MWP遺伝子を枯草菌を宿主として発現させ, 合成されたMWPを単離し, B.brevis47より調製したペプチドグリカン層と尿素存在下で混合し, Mgイオンを含む緩衝液に対して透析する事により擬結晶構造体を再構成する事に成功した. 再構成体の表面には, B.brevis47の細胞表面と同一の六角格子状の擬結晶構造体が全面に観察された. 一方, 枯草菌で合成されたMWPはそのN未アミノ酸配列を分析した結果, シグナルペプチドが残ったままの蛋白質であった. 遺伝子工学的に改変遺伝子を作製し, 枯草菌でそれぞれの改変蛋白質を合成し, 単離後, 上記の方法によりペプチドグリカン層上へ再構成を試みたが, すべての場合再構成体を観察できなかった. 今後は改変蛋白質を合成する際, 欠失領域を小さくして結晶形成に必須な領域を明らかにする事が必要となろう.
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