研究概要 |
本研究代表者らはすでにエレクトロインジェクション法(細胞壁を有する植物細胞に電気パルスにより, DNA,RNAを導入し, 細胞を形質転換する方法)により酵母生細胞および葉肉遊離細胞においてそれぞれトランスフォーメーションおよびトランスフェクションに成功している. 周知のように, 植物プロトプラストを用いる種々の形質転換法があるが, それらでは植物細胞のプロトプラスト化による分化全能性の欠失あるいは長期培養による遺伝的安定性の欠失などの本質的な問題があり, プロトプラストを用いない形質転換法の開発が強く望まれている. 本年度はまず本法による高等植物培養細胞のトランスフェクションおよびトランスフォーメーションについて研究した. トランスフェクションの研究:タバコ, ムラサキハナナ培養細胞およびこれら細胞より単離したプロトプラストを培養して細胞壁形成, 細胞分裂させた細胞(プロトプラスト由来細胞)へのタバコモザイクウィルス(TMV)粒子および同RNA, カリフラワーモザイクウィルスDNAなどののエレクトロインジェクションについて研究した. その結果, 培養生細胞ではいまのところ成功例はえられていないが, 培養3日のプロトプラスト由来細胞ではTMVにおいてプロトプラストと同程度の効率で, トランスフェクションが観察された. トランスフォーメーションの研究:タバコ培養細胞およびプロトプラスト由来細胞を用いて, プラスミドpCaMVCAT(35S-CAT-NOS)によるトランスフォーメーションについて研究した. 処理後24時間培養して, CAT(クロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ)活性を測定した. その結果, 培養2日のプロトプラスト由来細胞ではプロトプラストの約15%のCTA活性が認められたが, 培養12日細胞ではCAT活性はほとんどは認められなかった. また, 培養生細胞ではこれまでのところ成功例はえられていない.
|