研究概要 |
1.ビフィズス菌のアンモニア同化と調節機構 (1) 各種ビフィズス菌よりグルタミン酸脱水素酵素を精製・単離し, 諸性質を検討した. また既に確立していた手法によって調製したグルタミン合成酵素についても検討を重ね, 他菌種の場合と比較した. (2) 腸管内モデル系として母乳栄養児の新鮮糞便を用いて, これに添加したアンモニアの動向を検討し, その除法にビフィズス菌とグルタミン合成酵素が重要な役割を果たしていることを示唆する結果を得た. (3) 本研究中に見出されたビフィズス菌(グラム陽性菌)中におけるグルタミン合成酵素の特異的失活現象が, ある種の酵素によって触媒されることを見出し, 本酵素を精製して基本的性質を明らかにした. その結果, この失活化現象が, 大腸菌等のグラム陰性菌にのみ主として見出されていた, グルタミン合成酵素タンパクのアデニル化によることを明らかにした. 2.ビフィズス菌のオリゴ糖加水分解酵素の性質と利用 (1) 実用上有利な菌種として発見した. Bifidobacterium breve 203の産生する新規β-D-グルコシダーゼを調製し, その性質検討や培養特性の解析により, 本酵素がビフィズス菌の糖質, 特にセロビオース等のβ-D-グルコシドの資化, 代謝に重要な役割を演じていることを指摘した. (2) 上記β-D-グルコシダーゼに, 各種糖質にβ-D-フコシル誘導体のフコシル基を転移する特異的活性を見出し, 生成物の同定を行った. これら生成物のうちフシコルグルコース(β1,2, β1,3, β1,4, β1,6の混合物)がビフィズス菌の選択的資化糖であることを強く示す結果を得た. (3) B.breve 203によるβ-D-グルコシダーゼの生産性が, セロビオースを炭素源として生育した菌体中では約25倍に増加することを認め, 本酵素の簡易調製法を考案した.
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