研究概要 |
1.レダクターゼによるケトパントイルラクトンの不斉還元:Candida parapsilasis及びRhodotorula minutaにケトパントイルラクトンを特異的にDーパントイルラクトンへ変換する能力が高いことを見いだした。本菌の洗浄体を酵素源とし、グルコースを還元のエネルギー源とする反応系を設定し、収量増大の為の最適化を行った。グルコース5%と基質を12〜24時間ごとに1〜3%濃度になるようにフィーデングを行う反応条件下では、C.parapsilosisを用いると約100g/lのDーパントイルラクトンが生成した。このときの化学収率及び光学収率はそれぞれ99%及び95%e.e.であった。また、R.minutaの菌体を用いると50g/lのD-パントイルラクトンが化学収率100%、光学収率99%e.e.で得られた。この反応に関与するレダクターゼをC.parapsilosisの菌体粗抽出液より精製・単離した。本酵素は分子量30,000〜40,000の単量体酵素であり、ケトパントイルラクトン以外にも種々の共役ポリケトン類に作用する共役ポリケトンレダクターゼであることを明らかにした。2.ラセミ体パントイルラクトン中のL体のみを立体選択的に酸化し、これをD体へ還元してDーパントイルラクトンを得る方法:Nocardia属やRhodococcus属細菌にLーパントイル酸化能の強力な菌体が存在することを見い出した。N.asteroidesの洗浄菌体を酵素源として反応を行うと5〜10%のラセミ体基質中のL体基質のみをほぼ定量的にケトパントイルラクトンに酸化することができた。この際共存するD体は何ら変化を受けることなく反応液中に存在した。この反応液を上記のC.parapsilosisを用いる還元反応によって処理すると、ケトパントイルラクトンは定量的にDーパントイルラクトンに変換された。本法により、安価なラセミ体基質を効率よくD体に変換する方法が確立された。酸化に関与する酵素を単離し、本酵素が補酵素としてFMNを含む膜結合性の脱水素酵素であることを証明した。
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