研究概要 |
本研究ではBacillus amyloliquefaciensより分離した潜在性、低コピープラスミド、pFTB14(分子量、5.3Md)を用いて、Bacillus属プラスミドの自己複製機構を解明し、その結果をコピー数制御可能なベクタープラスミドの開発に応用することを目的とした。 pFTB14の自己複製に関与するDNA領域を欠失変異株を用いて限定し、1526bpからなる領域が複製に必須かつ充分であることを明らかにした。決定した塩基配列には1017bpからなるオープンリーデングフレーム(ORF)が存在し、ORF5′末端上流にはB.subtilisに見られるプロモータ配列およびStaphylococcus由来のプラスミド、pUB101やpC194の複製起点と推察されている塩基配列と相同な配列が認められた。 次にORFから推定されるタンパク(repタンパク)の性質を遺伝学的に検討した。ORF内に欠失・挿入変異を導入すると複製機能を消失することから、このタンパクは必須であり、また相補試験によりrepタンパクは複製起点と推定される領域に対してトランスに機能することを明らかにした。このrepタンパクと、pUB101およびpC194で推定されているrepタンパクとは、アミノ酸配列において40〜50%の高い類縁性が存在した。 さらにpFTB14のrepタンパクと複製開始領域と考えられるDNAとの相互作用を検討した。入ファージ由来のプロモータシステムを用い、大腸菌内でrepタンパクを著量生産し、部分精製した。得られたrepタンパクの分子量は約39,600であり、塩基配列から推定されたものと一致した。ゲルシフトアッセイを行ったところ、repタンパクと複製開始DNA領域が結合することが明らかとなった。以上の結果よリ、本プラスミド上にコードされているrepタンパクはプラスミド複製開始点に作用し、自己複製を制限していると推察された。
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