Bacillus pumilusのキシラナーゼの3次元構造を明らかにするため、結晶のX線解析を2.2〓分解能で行った。キシラナーゼ分子の大きさは30×40×35〓で、主にβシートから成り、中央に基質が統合し得る大きな溝があり、ここに活性部位が存在すると推定された。キシラナーゼとリゾチームは共に糖のβー1.4結合を加水分解することより、類似の作用機作が推定される。重原子置換、化学修飾の結果からも活性中心として酸性アミノ酸2残基が候補に挙げられた。一方、活性中心のような重要な残基は起源の異るキシラナーゼ間でも保存されていると考えられ、バチルス属、担子菌、カビのキシラナーゼのアミノ酸配列の比較から、Asp^<21>、Glu^<93>、Asp^<121>、Glu^<182>の4残基に限定された。Asp^<121>は分子の溝には面しておらず、さらに基質のサイズに適した残基間の距離を考慮するとGlu^<93>とGlu^<182>が活性中心の可能性が最も高い。 この2残基の部位特異的変異を行う前に以下の遺伝子操作を行った。構造遺伝子は分泌のシグナルをコードしているので、これを除去し、5′側に開始コドンのみを付けた遺伝子を合成オリゴヌクレオチドを用いて作成した。また遺伝子を3断片のカセット式になるように制限酵素部位を改変した。これを大腸菌高発現ベクター、pKP1500に連結することにより、大腸菌の全可溶性タンパク質の約30%がキシラナーゼとなった。前述の考察に基づきGlu^<93>とGlu^<182>をAsp又はSerに変換した。変異酵素を大腸菌抽出液より精製し比活性を比較すると、Glu^<93>→Asp以外は活性が天然酵素の10^<-4>〜10^<-5>の検出限界以下に低下した。Asp^<93>に改変したものは僅かに活性が認められたが、Kmは天然酵素とほぼ変らず、Vmが著るしく低下していた。以上の結果からGlu^<93>とGlu^<182>が活性中心の可能性が高いと結論された。
|