研究概要 |
鉄酸化細菌Thiobacillus ferrooxidainsは, 還元型の無機硫黄化合物と二価鉄の両方を酸化できるためにバクテリアリーチングにおける最も有用な菌として知られている. 著者は, T.ferrooxidaris中に従来他のthiobacilliで報告されてきたものとは全く異なった硫黄酸化に関与する新規酵素(鉄還元酵素)が存在する事を発見し, バクテリアリーチング能の高い鉄細菌を分子育種するために, 鉄還元酵素を均一に精製し, その性質を検討した後, 同酵素遺伝子をクローニングする事を目的とした. 本年は単離精製, 性質の検討を目的にし, 鉄還元酵素を電気泳動的に単一な標品として得, 電子受容体がFe3+である事を明らかにし, Sulfur:ferricion oxidoreductase(SFORase)と命名した. SFORaseは分子量46000, 同一分子量の二つのサブユニットからなっていた. 反応にはGSHの存在が必須で, 等電点及び反応の最適pHはそれぞれ4.6及び6.5であった. 本酵素がperiplasmic spaceに局在している事を明らかにし, SFORaseとIron oxidaseが鉄イオンでリンクする新しい硫黄酸化経路を提案した. 鉄細菌が硫黄培地で成育する際に, SFORaseばかりでなく, Iron-oxidaseも生合成される事を初めて明らかにしたが, この知見は著者らが提案している新しい硫黄酸化経路の存在を強く支持する. 鉄酸化細菌による元素硫黄を電子供与体にしてのMn^<4+>のMn^<2+>への還元が, SFDRaseの関与する機構で行なわれている事を明らかにした. SFORaseは電子受容体がFe^<3+>である新しいタイプの酸化還元酵素であるが, 同様にFe^<3+>を電子受容体にする新規酵素Sulfite:ferric ion oxidoreductaseが鉄細菌中に存在する事を明らかにした. Co^<2+>は鉄細菌が硫黄培地で成育するのを強く阻害するが, その阻害機構はCo^<2+>がSFORase反応に必須なGSH量を減少させるためにおこる事を明らかにした. 次年度は, 精製SFORaseを用いての硫黄酸化機構の検討, 及び同酵素遺伝子のクローニングを目的とする.
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