メタン生成細菌、Methanosarcina barkeriはコリノイド(Co含有)、ヘム(Fe含有)、F_<430>(Ni含有)のユニークなテトラピロール補酵素類を生成し、それらはメタノールのメタンへの代謝、増殖に必須の役割を担っている。しかし、絶体嫌気下での培養の難かしさ、また増殖速度、菌体収率が低いことからメタン以外の有用物質生産は試みられていない。本菌のコリノイド含量は高いので、これらの問題点を解決できれば有望なコリノイド生産菌と成り得る。そこで、本研究では、メタノール最小培地を用いて、これらの補酵素類の高速生産及びこれらの共通の前駆体である5ーアミノレブリン酸(ALA)の高速生産を試みた。得られた結果を列記する。 1.これらのテトラピロール補酵素を生産する目的で、種々Co、Fe、Ni濃度下で回分培養、ケモスタット連続培養、固定床連続培養を実施した。その結果、いずれの培養方法でも培地中のCo、Fe、Ni濃度を調節することにより、各々対応するテトラピロール補酵素の選択的菌体外生産が可能となった。例えば、固定床連続培養系(担体:珪藻土)において、Co、Feを低濃度に保ちNiを高濃度にすれば、F_<430>を選択的に生産でき(24μM/day)、Fe、Niを低濃度にしCoを高濃度にすればコリノイド(Bー12化合物)(20μM/day)できることが判明した。 2.ALAはテトラピロール化合物の前駆体であり、近年生物除草剤として注目されている。しかし、メタノール最小培地での増殖系ではほとんど蓄積しない。そこで、ALA脱水酵素の阻害剤によりALAの菌体外蓄積を試みた。阻害剤としてはレブリン酸(LA)が有効であり、また2ーオキソグルタル酸添加によりALA濃度は増加した。LA存在下、上記の固定床連続培養系により、約1ケ月の長期連続生産が可能となり、生産性は0.4μM/dayとなった。
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