今年度においては、リグニン分解担子菌のプロトプラストの電気融合について検討を加えた。また新たに、白色腐朽菌である、Coprinus aff ellisiiを用いて、Phanerochaete chrysosporiumとの異種間細胞融合についても検討した。 まず、P.chrysosporioumのプロトプラストを従来法により生成し、電気融合装置SSH-2(島津製作所)を用いて電気融合を行った。プロトプラスト懸濁液としては、0.1mM CaCl_2含む0.8Mマンニト-ルが適当であった。プロトプラストの誘電電気詠動に関する高周波電圧及び印加時間は、各々15V、20秒において、最も多くのシングルペアの形成が認められ、それ以上の値では、多数のプロトプラストが連なったパ-ルチェ-ンが形成した。また、パルス電圧300V、パルス幅50μ秒、パルス回数2回(1秒間隔)の条件において、プロトプラストの破壊が少なく、かつ高い融合頻度を示すことが明らかとなった。本菌のメチオニン要求性変異株とニコチン酸要求性変異株を用いて上記の条件で電気融合を行ったところ、栄養要求性が解除された多数の融合株が取得された。電気融合のおける融合頻度は、ポリエチレングリコ-ルを用いる方法の約3倍の値を示し、得られた融合コロニ-の大部分は、最小培地に移植しても生育した。C.aff ellisiiのプロトプラストの生成最適条件を確立した。本菌のプロトプラストは、通常の再生培地では再生せず、酵母エキス(0.2%)を添加した同培地において再生が認められた。P.chrysosporiumのメチオニン要求株とC.aff ellisiiのプロトプラストを用いて、電気融合を行ったところ、通常の再生培地に再生する異種間融合株と思われるコロニ-が得られた。この融合株は、両親株の性質を合わせ持ったフェノ-ル酸化酵素の生産性を示し、高リグニン分解性を示す可能性が示唆された。
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