研究概要 |
カルボキシルプロテア-ゼ(CP)は反応至適pHを酸性域にもち、ペプスタチンや合成阻害剤DAN,EPNPによって阻害される酵素群で、その触媒残基が2ケのAspであることより最近ではAspartic proteaseと呼ばれる。一方著者らは独自の発想でペプスタチン非感受性の新しいタイプのCPを種々発見し検討を加えてきた。その最たる成果はそれらのCPの1つ、Scytalidium lignicolum B酵素の触媒残基が今までのAspでなく、Gluであることを明らかにしたことである。CPの触媒残基がGluという報告はなく、この成果はペプスタチン非感受性の一群のCPがGlutamic proteaseである可能性を強く示唆する。本研究はこの可能性を明らかにする目的でペプスタチン非感受性CPのうち、Pseudomonas sp.No.101 CPに的を絞って検討した。なお、本酵素はペプスタチン感受性を問わず原核生物より得られた最初のカルボキシルプロテア-ゼである。 1.一次構造の解析:まず、本酵素の一次構造について検討し、SーS結合を一つ有し、363残基のアミノ酸よりなる一次構造を明らかにした(但し、9残基は未決定)。この構造はいずれのCPとも全く相同性がなく、また、CPの触媒残基配列である-Asp^*-Thr-Gly-もその構造中に認められなかった。 2.特異的阻害剤、チロスタチンの開発:一方では、本酵素に有効な阻害剤を微生物に求めて探索しチロスタチンと命名した新規阻害剤を分離菌Kitasatosporia sp.No.55より得た。このチロスタチンはN-isovaleryl-tyrosyl-leucyl-tyrosinalの構造をもち、Pseudomonas sp.No.101などの細菌由来のペプスタチン非感受性CPをほぼ化学量論的に阻害した。今後、このチロスタチンの構造をモデルにして種々の合成阻害剤を開発し、一次構造の明らかにされたPseudomonas sp.No.101 CPがGlutamic proteaseか否かの結論を得たい。
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