研究概要 |
霊芝(Ganoderma lucidum)の苦味成分中, 炭素数27個の新規トリテルペノイド(lucidenic acid類)を生成する三枝株を用いて, その生合性機構を解明する目的で, マンネンタケの液体培養および人工栽培を行い, 各生育段階におけるテルペノイドの組成変化を比較検討した. 1.振盪培養菌糸体の生成するテルペノイドの検索を行い, 炭素数30個のganoderic acid SとTのみを単離同定した. 子実体誘導前の固体培地上の菌糸体マットからganoderic acid Ma〜Mkの11種の新規トリテルペノイドと3個の概知のトリテルペノイドを単離し化学構造の決定を行った. いずれも炭素数30個であり, 3位の置換基がα位の水酸基であったりアセチル基であったりする点が子実体成分とは大きく異なっていた. 2.生育初期(2〜3週令)の子実体を採取し, その成分を検索した. 主成分であるlucidenic acid類以外に炭素数39個のepoxyganoderiolと命名した3種の側鎖にエポキシル基を持つ, 生合成の重要中間体と推定されるテルペノイドを単離・構造決定を行った. 3.子実体成長に伴う組成変化を比較検討し, 子実体の誘導に伴って一連のlucidenic acid類の生成が越り, その成分組成は生育段階によって異なることを明らかにした. 4.以上の結果から炭素数27個のlucidenic acid類の生成は, 炭素数30個のトリテルペノイド特に生育初期の子実体より単離したepoxyganoderiol類を前駆体として, エポキシ環の酸化開裂によって生成する可能性が非常に高いと推定される. これらの結果を基に来年度はlucidenic acid生合成機構の解明と, 菌株の系統により異なるといわれる霊芝の薬効について, 化合物レベルでの系統識別と霊芝の質的判別を可能にする基準を確立したい.
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