研究概要 |
簡便な抽出法とHPLCによる大豆サポニンの分離条件を検討した結果70%エタノールで配糖体物質を抽出することができ, pH4.5以下のブタノール層に定量的に移行させることができた. このエタノール抽出液又はブタノール層を試料にし, HPLCで各サポニン成分を分析することができた. この方法により, 種子, 葉, 茎等のサポニン組成を調べた結果, AグループとしてAa,Ab,Ac,Ad,Ae,Afの6種類, BグループとしてBa,Bb,Bb´,Bc,Bd,Beの6種類をそれぞれ明らかにすることができた. しかも部位によってその組成と含量が著るしく異なり, 特にAグループとBaは種子の胚軸にのみ存在し, Ba以外のBグループは植物体全般に分布していることがわかった. 続いて分画法を検討した結果, 逆相シリカゲルクロマトグラフィーとセフアデックスLH20によるゲルロ過でサポニンをAとBグループに分画することができた. さらに分取用HPLCで各単離標品を得ることができた. これらの単離標品をHPLC等で同定した結果, Bbが既知のsoyasaponin I, Bb´がIII, BcがII, Abがsoyasaponin A1のアセチル化体, AfがA2のアセチル化体にそれぞれ相当し, AグループとBグループのBa,Bd,Beは全く新規な物質であることがわかった. そこで, ´H-NMR, ^<13>C-NMR, MS, IRで機器分析した結果, Aグループ成分は全てsoyasapogenol AのC-22位の末端糖鎖のみ完全アセチル化した特異な構造であり, Ba,Bd,Beはsoyasapogenol Bをアグリコンとし, BdとBeは不安定な物質であったが, Baの構造は3-0-〔β-D-gluconopyranosyl(1→2)-β-D-glucuronopyranosyl〕-soyasapogenol Bであることを初めて明らかにすることができた. 次にAグループの末端糖鎖のアセチル基に注目し, CDで調べた結果, Abに著るしい負のコットン効果のあることがわかった. これらの結果に基づいて, 次年度以降, 品種間の差異, 発芽と登熟における挙動, 未確認サポニン等を調べる.
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