研究概要 |
椎茸菌糸培養抽出物よりマクロファージの活性化を指標に, エタノール分別沈澱, ケルろかにより免疫活性高分子糖蛋白質を得た. 得られた高分子糖蛋白質はマウス腹腔の常在性および炎症性マクロファージのグリコリシスを有意に亢進した. この画分をFITCを用いて蛍光標識し, 腸管よりの移行の様子を追跡した. DAラットに胸管カニュレーション術を施し, 胸管リンパを連続的に流出させた. 手術後, 蛍光標識した高分子糖蛋白質を経口により投与し, 流出する胸管リンパを経時的に採取した. リンパ中の細胞分画を遠心により分離し, 上清を蛍光偏光解消測定装置にかけた. 同時に, 門脈血ならびに腹大動脈血についても本装置によって解析を行った. その結果胸管リンパ中の蛍光濃度は試料投与後ただちに上昇し, 蛍光標識された糖蛋白質が腸管よりすみやかに吸収され, それがリンパ系へと移行し, 投与後2〜3時間で最大値に到達することが確認された. 蛍光強度の増大は蛍光の偏光度, すなわちP値の減少を伴っており, この蛍光の挙動が投与した試料に由来していることを示している. 最大値に達した蛍光濃度は, その後徐々に下降したが, 約10時間にわたって腸管からの吸収, それに続くリンパ系への移行が持続することが判明した. また血管系においては, 投与後10時間あるいは20時間においても門脈血と腹大動脈血の間に蛍光活性の有意の差が認められた. これらのことより, 経口投与された本物質の腸管よりの吸収動態は, 腸管粘膜上皮より吸収され, 腸リンパ本幹を経由して胸管に移行し, 左静脈角から一般循環系へはこばれる経路と, 門脈行性にも吸収される経路の少なくとも2種類があることが確かめられた. これは食餌等によって経口的に動物に導入された高分子化合物の腸管での挙動を考える上できわめて興味深い結果をもたらしたと思われる. 今後より詳細な吸収ならびに移行の機構を明確にする予定である.
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