シイタケの染色体をパルスフィールドゲル電気泳動法により分離する目的で、菌糸細胞のプロトプラスト化を再々度検討した。その結果、静置培養菌糸細胞をセルラーゼオノズカR-10、メイセラーゼ、キチナーゼ(或いはウスキサイム)の混合液で処理すると高効率でプロトプラストが得られることがわかった。プロトプラストを濃縮し上記電気泳動にかけたところ、出芽酵母の染色体(16本あるいは17本ある)と比べてかなり大きく、その数も多いことが予想された。なお、分裂酵母の染色体も高分子であるが、その数は3本であると報告されている。 一方、ras遺伝子のクローニングであるが、昨年中に一応有望と考えられていたクローンを解析したところ、単離したDNA断片は計らずも目的のものではなかった。この原因としては、調整した染色体DNAがかなり低分子化しており、ras遺伝子を含む一定サイズのDNA断片を量的に揃えられなかったこと、及び、V-Ha-ras(或いは出芽酵母のras)をプローブとしてのハイブリダイゼーションシグナルが弱い(シイタケras遺伝子内にイントロンがある可能性あり)ことが考えられた。そこでこれら問題点を解決すべく種々検討した結果、染色体DNAの調整に関しては、菌糸細胞を液体窒素で凍結しブレンダーで粉状に粉砕する方法により、高分子でかつサイズの揃った染色体DNAが得られた。また、ニックトランスレーション法の代りにランダムプライマー法を用いて、プローブの放射能比活性を10倍に上げることができた。この組合せでサザンハイブリダイゼーションしたところ、非常にシャープなハイブリダイゼーションバンドが得られた。これによりDNAライブラリー作成時の目標範囲を狭める、つまり少ないクローンから効率良く目的クローンを選び出すことが可能となった。現在、鋭意、ras遺伝子を単離すべく大腸菌内でクローニング中である。
|