この研究は、月夜茸生物発光の分子機構解明をもくてきとする。初年度には発光体がリボフラビン・(ビタミンB2系)であることを、次いでこれが同じ緑色の蛍光物質前駆体から酵素分解により生成することを明らかにした。この前駆体をLanpteroflavin(ランプテロフラビン)と命名し、初年度設置した積算計算機能を持つ蛍光分光高度系を用いて発光スペクトルを測定した。524cmに最大値を持つスペクトルを得、これがイソアロキサジン環部分に基づくものと同定した。培養菌糸もキノコのヒダも同一の発光スペクトルを与えた。新鮮なキノコのヒダを分離し良く水洗したのち、pH3に調整した水の中で通気発光させると発光物質が侵出してくる。この溶液を濾過XAD2カラムおよびODSカラムに吸着させ、メタノール溶出した。この方法からはランプテロフラビンのみが得られ、これが月夜茸生物発光の発光体であると結論した。ランプテロフラビンは、pH1で60℃に加温すると加水分解してリボフラビンとなる。質量分析では前者はm/z=509(M+1)後者m/z=377であるので質量数133(O_5H_9Oとなり5炭糖が結合していることが推定される。ランプテロフラビンのヘキサアセテートについてFABマススペクトルの糖質部分に関するフラグメントイオンm/z=259についてのHeとのコリジョンスペクトルを測定し、標品の4種類のペントフラノシドのアセテートについて相当するコリジョンスペクトルと比較することによりリボーズと決定した。糖とリボフラビンとの結合位置については、アノマー位のプロトンと5'位の2プロトンとの間にNOEが観測されることから1"ー5'であると決定した。加水分解物のNMRおよびCDスペクトルより発光体ランプテロフラビンの構造は絶対立体構造を含め、5'ーαーDーribofuranosylーriboflavinと決定し、当初の目的を達成した。今後は発光体を立体選択的に化学合成し、これにより生物発光の分子機構を解明する段階に進みたい。
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