研究概要 |
大腸菌由来のグルタチオン合成酵素(GSH-II)のATP結合サブドメインを形成しているTrp66からArg86までのペプチド鎖を, マウス由来ジヒドロ葉酸還元酵素(DHFR)のNADP結合サブドメインを形成しているTrp58からArg78までと互いに入れ換えたキメラ酵素タンパク質を作成することを試みた. GSH-IIとDHFRの間でアミノ酸配列を入れ換えることができるように, それぞれの遺伝子上にsite-directed mutagensisによって制限酵素サイトを導入した後, 対応する遺伝子フラグメントを切り出して, 入れ換えたキメラ酵素遺伝子を作成した. キメラ酵素遺伝子は制限酵素による切断で選抜し, dideoxy法によりそのDNA塩基配列を確認した. キメラGSH-II遺伝子はtac-promoter下にクローニングし, 大腸菌JM105株で発現させた. 野生型酵素およびキメラGSH-IIはそれぞれ菌体総タンパク質の約48%, 27%発現した. しかし, 野生型酵素タンパク質は可性性であり酵素活性を示したのに対し, キメラGSH-IIタンパク質はinclusion bodyを形成し, その酵素活性を調べることはできなかった. DHFRにGSH-IIのフラグメントを入れたキメラDHFRの遺伝子も作成し, 同様の方法で大腸菌での発現を試みたが, 発現は極めて少なかった. そこで, 真核生物のタンパク質でも多量に発現することが可能であると報告されている, 多コピープラスミドにクローニングして大腸菌で発現させたところ, 発現率は14%, 3%にまで上昇した. しかしこの場合にも, やはりキメラDHFRタンパク質はinclusion bodyを形成した. 現在これらキメラ酵素タンパク質の可溶化について実験条件を検討中である. また, 次年度はアミノ酸残基の置換変異型タンパク質やキメラタンパク質においてしばしば観察される, このようなinclusion bodyの生成原因を明らかにするために, 入れ換えるペプチドの長さを種々変えてキメラGSH-II DHFRタンパク質を作成し, 可溶性との関連を調べる予定である.
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