グルタチオン合成酵素のArgー55からIleー96までのサブドメインと、マウス由来のジヒドロ葉酸還元酵素のGlnー47からLeuー89までのサブドメインとを入れ換えた。キメラジヒドロ葉酸還元酵素の遺伝子dgdを作成した。このキメラ遺伝子を大腸菌で発現させたところ、インクルージョン体を形成して不溶化したために精製や活性の測定を行なうことができなかった。そこで、はじめに不溶性キメラ酵素の精製をSDSー電気泳動でおこなったのち、可溶化することにした。電気泳動ゲルからキメラ酵素部分のゲルを切り出して、8M尿素によってゲルから抽出した。次いで、SDSの除去をおこなってから、透析により尿素を段階的に除去することにより可溶化に成功した。このキメラ酵素のジヒドロ葉酸還元活性を測定したところ、1.2unit/mgであった。これは野生型ジヒドロ葉酸還元酵素の活性の0.1%にあたる。しかし、このようにして単にサブドメインを入れ換えて作成したキメラ酵素では、もとの野生型酵素とくらべてアミノ酸残基の挿入、欠失が生じている。そこで、キメラ酵素遺伝子dgdにsite-directed変異をおこなって、Pheー60の削除とArgー71の挿入を行なったキメラ酵素遺伝子dgd-frを新たに作成した。このキメラ遺伝子の発現、精製、可溶化を同様におこない、3.0gの菌体から1.5mgの精製キメラ酵素DGD-FRを得ることができた。得られたDGD-FRの酵素活性を測定したところ4unit/mgであった。すなわち、グルタチオン合成酵素とジヒドロ葉酸還元酵素のアミノ酸配列を比較したときの挿入、欠失を補正することにより、約3倍の活性向上がえられたことになる。これらの結果は、アミノ酸配列の疎水性プロフィールや電荷分布を改良することにより、キメラ酵素の活性と基質特異性を向上させることが可能であることを示している。このように、本研究はサブドメイン交換によるキメラ酵素作成、可溶化、精製ならびに活性の改変をはじめておこなったことになる。
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