研究概要 |
日本の未利用澱粉資源としては、休耕用に栽培されているヒシの実、東南アジアのものとしては、クズイモとヤマノイモを選択して、これらの澱粉の分子構造を詳細に検討し、特微を明らかにした。これらの結果と、代表研究者らのグループによって最近明らかにされた他の澱粉についての知見を総合して、澱粉の諸性質間の関係を体系づけ、重要な知見を得た。 ヒシの実の澱粉は、粒の結晶構造がA、B型のほゞ中間に位置するC型であった。アミロースは分子量分布が広く(重合度160ー8090)、HPLCのゲル濾過で3つのピーク(重合度700,1850,6670)を示し、βーアミラーゼの分解限度が95%の高い値を与えることなど、特微が見いだされた。 クズイモの澱粉も結晶構造がC型で、アミロース分子は非常に大きく、重合度分布の幅は1530ー30000(頂点は10600)で、特微的であった。アミロペクチンの数平均鎖長は19ー20で、C型に相当する長さであった。 ヤマノイモの澱粉は、指存在来種(Kau18)、ジャワ原産(Kau09)、グアム原産(Kau14)の3種について詳細に検討した結果、3種とも類似した値を示し、ヤマノイモ澱粉の種の特性が明らかになった。アミロース分子の重合度分布は300ー18000で、小分子のものが比較的多量存在すること、アミロペクチンの平均単位鎖長がジャガイモのものより10%長いこと、などが特徴として見出された。 以上の新知見と8種のコメ澱粉、その他の澱粉についての知見から、アミロース分子の極限粘度は試料中の分岐分子の量に大きな影響をうけ、分子量が同じであれば、分岐分子の量と高い相関を示すこと、アミロペクチン分子のヨウ素結合量や極限粘度は超長鎖(重合度約1000)の量に比例することなどの新知見が得られた。また、アミロース標品中の僅かに分岐する分子を中間成分と呼ぶことを提唱した。
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